暗号資産(仮想通貨)といえば、これまではビットコインやイーサリアムなど、既に市場価値の高いコインばかりが注目されがちでした。しかし、昨今はこれらの主要コインに対する投資効果が停滞している中で、新たなリターンが期待できる投資対象として脚光を浴びているのが、上場前の暗号資産プロジェクトです。バイナンス新規上場情報を見るとわかるように、多様なエコシステムを持つプロジェクトたちが上場スケジュールを明確にしており、投資家は大きな利益を得るチャンスとしてこれらを観察しています。
ただし、このように投資価値の高い暗号資産プロジェクトが多く誕生している一方で、すべてが間違いなく上場するとは限りません。上場までのプロセスは複雑で、多くの要件を満たす必要がありからです。本記事では、暗号資産が取引所に上場されるまでの流れを詳しく解説します。
上場の準備段階
プロジェクトの成熟
取引所への上場を目指す前に、プロジェクトが一定の成熟度に達していることが重要です。具体的には、明確なビジョンと実現可能なロードマップを持ち、機能するプロダクトまたはプロトタイプが存在することが求められます。また、活発なコミュニティと開発活動、そして透明性の高い運営も不可欠です。
プレセールの実施
多くの暗号資産プロジェクトは、上場前にプレセールを実施します。これは、初期資金を調達し、早期支持者をすばやく獲得するためです。したがって、プレセールでは投資家の興味を惹くように、通常は上場後の価格よりも安価な価格でトークンを提供します。
法的準備
上場にあたっては、法的な準備も欠かせません。プロジェクトの法的構造を確立し、コンプライアンス体制を整備する必要があります。また、必要に応じて法的意見書を取得し、各国の規制に対する対応策を検討することも大切です。特に、日本国内での上場を目指す場合は、金融庁の規制に準拠する必要があります。
技術面の確認
暗号資産プロジェクトは複雑な技術が組み合わさっていることから、技術1つ1つのチェックも重要です。たとえば、スマートコントラクトのセキュリティ監査を実施し、スケーラビリティを確保する必要があるでしょう。また、ウォレットの互換性を確認し、APIを整備することも求められます。これらの技術的要件を満たすことで、取引所との統合がスムーズに進みます。
取引所の選択
上場によってプロジェクトが大きく飛躍するためにも、適切な取引所の選びが大切となります。そのため、取引所の評判や信頼性、取引量と流動性、対応している地域などを考慮して選択する必要があります。日本国内では、コインチェックやビットフライヤーなどの大手取引所が大きな知名度を誇っていますが、海外の大手取引所としてはバイナンスやコインベースなどが一般的に有名でしょう。
上場の申請
申請書類の準備
上場申請には、多くの書類が必要となります。具体的には、プロジェクトの詳細な説明から、トークンエコノミクスの詳細、ホワイトペーパー、チームメンバーの経歴などが含まれます。
デューデリジェンス
取引所は、提出された書類を基に詳細なデューデリジェンスを行います。この時、プロジェクトの技術的な実現可能性、チームの能力と経験、トークンの経済モデルの持続可能性、法的リスク、セキュリティリスクなどが精査されます。また、デューデリジェンスの過程で追加の情報や説明を求められることが多く、上場のためには迅速な対応が求められます。
契約交渉
暗号資産プロジェクトがデューデリジェンスを通過すると、上場に関する契約交渉に入ります。上場手数料やマーケットメイキングの取り決め、流動性の確保などが主な交渉ポイントとなり、交渉の結果、双方が合意に至れば上場に向けた具体的な準備に入ります。
上場の実施
技術的統合
上場が決まると、取引所のシステムとの技術的な統合作業が始まります。具体的には、APIの連携、ウォレットの統合、セキュリティテスト、取引テストなどが必要作業です。これらの作業を通じて、安全かつスムーズな取引が可能であることを確認できます。
マーケティング活動
上場に向けて、暗号資産プロジェクトと取引所の双方でマーケティング活動を行います。たとえば、プレスリリースの発行やソーシャルメディアでの告知、コミュニティイベントの開催、インフルエンサーとの協力などが活動に含まれます。マーケティングがうまく進捗することで、上場に向けた投資家の期待感を高め、初期の取引量を確保することができるでしょう。
上場後の対応
継続的なコンプライアンス
上場後も、取引所の要件に継続的に準拠する必要があります。たとえば、定期的な報告書の提出や、重要な開発情報の適時開示、コンプライアンス体制の維持などに随時対応することが求められます。特に日本国内の取引所では、金融庁の規制に基づく厳格な管理が重要です。
コミュニティ管理
暗号資産プロジェクトが真に成功するためには、コミュニティの充実が欠かせません。そのため、コミュニティに対して定期的なアップデート情報の提供や、コミュニティイベントの開催、フィードバックの収集と対応などが必要です
継続的な開発
プロジェクトが持続的に成長するために、ロードマップに基づく機能の実装、パフォーマンスの改善、セキュリティの強化などの継続的な開発が求められます。このような継続的な開発を通じて、プロジェクトの価値を高め、長期的な成功を目指します。
結論
暗号資産が取引所に上場するためには、本記事で紹介したように、長期的かつ複雑なプロセスが存在します。しかし、適切な準備と戦略的なアプローチを取ることで、成功の可能性を高めることができます。また、上場後も継続的な努力が必要ですが、それによってプロジェクトの持続的な成長につながります。
なお、日本国内では2022年12月より、一部の暗号資産について上場前の事前審査が原則撤廃され、事後モニタリングへ移行しています。これにより、新しい暗号資産の上場がより迅速に行われる可能性が高まっています。ただし、ICOやIEO、国内初上場となる暗号資産については、依然として厳格な審査が行われる点には注意するようにしましょう。